聖夜に舞い降りた天使

ようやく国立総合病院の救急外来に辿り着いた。

救急外来で優先度を決定するためのトリアージュには乳児から老人までたくさんの人々が並んで待っていた。





(早く、してくれ……)





焦れったい気持ちで待っているが、一向に列は減る気配がない。

時間だけが虚しくすぎていく……





ようやく2時間して通された。

「朝起きたら息苦しそうな呼吸と熱があって、寒気もするみたいで。。。」

息せき切って病状を説明すると、

「では、後で御呼びしますので番号札を取ってお待ち下さい」

事務的な対応であっさりとトリアージュを出される。


アンジュは息苦しそうにしており、どう見ても緊急を要するとしか思えないのに
なぜすぐに対応してくれないんだ……


腹立たしい気持ちになるが、大人しく待つしかない。





更に待合室で30分待っていると持ち札の番号が表示されたランプが光った。

「健康保険カードはお持ちですか」
「いえ」
「それですと、実費になりますが、よろしいですか?」
「はい」
「お名前は」
「アンジュ」
「アンジュ……名字は?」


アンジュの名字さえも知らないことに愕然とする。


「分かりま、せん…」
「住所と連絡先と主治医の連絡先をこちらに記入いただけますか?」
「すみません……何も、知らないんです……」

「……ご家族の方とは連絡つきますか?」
「いえ……」


と、後ろから声が聞こえた。





「あら、アンジュ=アルベールさんじゃない?」




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