ド天然!? 魔女っ子の秘密【2】
城周辺での魔法の使用はできないから、あたし達は魔法が使えるところまで歩いて移動した。

城下町は今日も今日とて明るくて賑やかだ。

あたしの心とはまるで正反対だとその鮮やかさに目を細めていると、千沙さんが言った。


「ご当主から話を聞いています。大変でしたね、聖獣が出てきたり…」


千沙さんは小さい頃のように頭を撫でてくれた。



「よく頑張りましたね」


その手の優しさに、今まで押し殺してきたもの全てが溢れてくるようで涙がこぼれた。


「さ、帰りましょう。ご当主も、奥様もお待ちです」


涙のせいで声が出ず頷いた。

千沙さんは杖を出すと魔法をかける。


「"モーメント・ムーブ"」


瞬間移動の魔法。

光る魔方陣、吹き荒れる風の中、あたしは目を閉じた。



風がやんだ頃、目を開けるとそこは我らが"ガーネット"の店の前だった。

王城周辺の淀んだ空気とは違う、晴れやかな空気。

それを吸い込んで、ああ、戻ってきたんだなと思う。



「…さあ、お父様にはなんて叱られるか」



滲む涙を拭って前を見据える。

説教確定だというのに、それを口にするとなんだか視界が開けていく感覚がした。

取り残された、と感じていた今までとは違う。

なんだか自分のすべきこと、やるべきことがまだあるんだから、ここで立ち止まっているわけにはいかないって言われているみたい。



「…由良さん?」


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