ド天然!? 魔女っ子の秘密【2】
クリスさんの瞳にはじんわり涙が浮かんでいるようにも見えた。

きっとこの人も、姫様を危険な目に遭わせたくない、森の中になんて行かせたくなかった。


「王にも姫を止めていただくようお願いいたしました。

しかし王はおっしゃいました。

『泉の守護はジュリアの使命。泉の件に関しては、ジュリアの決めたことに従え。そしてジュリアと泉を守れ』と」


そう、硬い声でおっしゃったと、クリスさんは言う。


「凶悪な魔物が出現するのは陽が落ちてから明け方にかけて。今の時間帯には現れる可能性は低い。それに姫を守る衛兵の数も増やし、守護結界もいくつも重ねて展開しています」


一応の守護体制は強化している、ということなのだろうけど。


「とにかく早く森に行くことに越したことはないですね」


翔太の言葉にあたしは頷いた。


「瞬間移動できれば良いのですが、ここは王城。王城と外を行き来する類の移動魔法は全て無効化されます。また森周辺は非常に神聖な場ですから魔法の効力が非常に不安定になることと結界がございますから…」

「瞬間移動を使うと危険だから結界の近くまで箒で飛ぶしかないと、そういうことですか?」

翔太が言葉を引き取ると、クリスさんは「作用にございます」と申し訳なさそうにうつむいた。

「とりあえず、ここでじっとしていても仕方ないですよね」

あたしの言葉にクリスさんははっと顔を上げた。


「早く向かいましょう、姫様のもとへ」


どんな状況だろうと、あたしの仕事は姫様を守ること。姫様のそばにいなければ、始まらない。

クリスさんは決意を固めた顔をして頷き、翔太は微笑んだ。

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