ド天然!? 魔女っ子の秘密【2】
その言葉が胸にぐっと突き刺さる。


「ああ、うん。本当にね」


一歩間違えれば本当に処罰されるところだったと思うと、今になって急に緊張してきて顔が引きつる。


「そうですわ!」


姫は何か思いついたようで、手をぽんと合わせた。


「昨日リーリアの実のクオートを焼きましたの!すっかり出すのを忘れていましたわ」


クオートというのは焼き菓子の一種で、軽い食感が特徴だ。どの家庭にもそれぞれに伝わるレシピがあり、幅広いアレンジができるのも好まれている理由のひとつ。


「少々お待ちくださいませ!」


姫は勢いよく席を離れて、奥にある台所へ向かう。

すると床に敷き詰められた石畳に躓いたのか、姫の体が前に傾く。


「姫!」


晴人さんが慌てて叫ぶ。

このままじゃ姫が転ぶと思ったそのときだった。


「あれ?」


結果から言えば、姫は転ばなかった。


「っと、危ない、ですよ…お気をつけて」

「も、申し訳ございません」


転ぼうとした姫を翔太が抱き留めたからだ。

そそっかしい、とでも言いたそうな表情を浮かべる翔太とは対照的に、姫はあわてて翔太から離れたが、腕は掴んだまま翔太の目をじっと見ている。頬は確かに色づいていた。


「…えっと、どうかされました?」


不思議そうに尋ねる翔太に姫は「やっぱり、そうですわ」と頷いた。


「宝石のような青い瞳、ブラウンの髪…間違いありません。

翔太様はわたくしの、たった一人の"運命のお相手"なのですわ!」


姫が発した言葉はあまりにも突拍子がなく、理解するのに時間がかかる。

目を輝かせる姫とは対照的に、晴人さんは固まり、あたしと翔太は顔を見合わせた。
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