溺惑バレンタイン(『恋愛遺伝子欠乏症 特効薬は御曹司!?』番外編)
 円形の白いバスタブにはたっぷりと湯が張られていて、鮮やかなバラの花が一面に浮かんでいる。赤、ピンク、薄紫、黄色、オレンジ、白……。心が浮き立つほどの華やかさだ。

「欧米ではさ、バレンタインデーには恋人同士が贈り物を交換するだろ。だから、俺も亜莉沙に花を贈りたいと思って……」
「それで、ディナーの前にこれを……?」
「そうなんだ。でも、これだけじゃない。ベッドルームの花瓶にもバラの花束を用意したんだ。花屋に寄ってたら遅くなってしまって、本当にごめん」

 航がすまなさそうに言った。亜莉沙は嬉しくてたまらず、彼の首にしがみつく。

「航さん! ありがとう! それからごめんなさい、私、一人で勘違いして……バカなことを……」
「いいんだ、俺もいまいちビシッと決められなかったから」
「すごくびっくりして……すごく嬉しい」
「もっと早く花を調達しなきゃいけなかったんだろうけど、さすがにバレンタインデーで花屋が混んでてさ」

 嬉しくて目頭が熱くなり、亜莉沙は航の肩に顔をうずめた。

「これで仲直りだな。チョコレートみたいに濃密な夜を過ごせそうだ」
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