最後の恋愛Ⅱ
柳生さんと日下部さんは仲良しではなかったはず。

全然部署も違うし、そもそも関わりがないはず。

なのに、なぜふたりで―。

「仕事、終わりましたよね?」

日下部さんの言葉に私は、うんととりあえず頷いた。

「そうね、お疲れ様。」

なにやら、怪しい雲行き・・・。

ここは逃げるが勝ちだな。

そそくさと鞄を抱えて、けど逃げ出そうとする私の左腕を掴んだ柳生さんが言う。

「まぁまぁ、そう急がずに。」

「え・・・っとぉ・・・。」

「見てたわよぉ、面白いことやってたじゃないの。美味しいお茶入れ対決、だっけ?」

あああ、顔が悪い。悪い顔になってるよぉ・・・

ダメだダメだ!

この人は、大麦とのこと知ってるんだし、ここで明らかにされるとまずいってば、いろいろと!

「あ、やはははは、ね、ほんと、お金持ちのお嬢様の考える事は平民には理解できませんってね~。」

「もう、午後ずっと聞きたくてうずうずしてたんですよ~、さ、行きましょ行きましょ!」

って、日下部さんがわたしの右腕を掴んで言う。

わ~

やっぱりそうか、そうだよねそうだよねぇ

「あ、えっと、今日はね、ちょっと用事が!」

「ないない。嘘だから。あ、大麦くんも一緒に行く~?」

ひえええええ

ちょ、柳生さんやめてくださいよ!

冗談じゃないよ!

「やっ、大麦はほら、さっきの、き、如月さんと用事でもあるんじゃないでしょうかね?」

ねっ?

大麦、整理するってんなら、とっととして来い!

そして、顔洗って出直して来い。
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