最後の恋愛Ⅱ
開いた引き戸がスラリと音を立てて閉まると、部屋の中は一気に静かになった。

ふ・・・ふたりきりだ。

・・・

で・・・だな。。

とりあえず、とりあえずは・・・

「えっと、あ、の・・・?」

恐る恐る大麦を見上げる。

指先までしっかりと絡めとられた私の右手を救わねば・・・!

見上げた視線の先で、大麦とばちりと目が合った。

と、咄嗟に顔を伏せてしまった。

だって―

「何で、目逸らすんだ?」

頭上から降りてくる声に、私は身を強張らせた。

それには、理由が2つあります。

まず、1つめは、大麦が真剣な顔をしていたから。

2つめは、そんな大麦を男として意識してしまった自分がいて。

気まずくて・・・思わず目を逸らしてしまった。

とは、言えず。。。

「ん?」

大麦は、ふいと私の顎に指を添わせると顔を上げさせた。

ばちり

と、再び目が合う。

年下―とは、とてもじゃないけど思えない。

自分よりもずっと余裕で大人びたしぐさ。

そのまなざしに、引き込まれる自分がいる。

まだ、好きじゃない。。。

まだ、本気になんかなってない。。。

まだ―

頭の中で繰り返しながら、大麦を見つめていた。
< 132 / 226 >

この作品をシェア

pagetop