最後の恋愛Ⅱ
さてと―

今度はこっちだ。

大麦は、私の向かいの椅子に座り、ふうと息をついた。

・・・肘をつく、その長い指を組んで。

爪先も切りそろえられていて、大きな手・・・。

ぞくっとする。

さっきまで、自分に触れていたその手に、私はもう、欲情している。

大麦の熱を肌で・・・感じたい―なんて・・・。

「大和?」

はたっと我に返り、答える。

「は、はいっ!」

大麦はくすっと笑うと言った。

「泣いてたわりに元気だな。」

泣いてたって言われて、あ、メイクが崩れてるのでは!と思った。

いくらウォータープルーフといえどもあの号泣には耐えられまい。

思わず俯く。

乙女心だな。

「・・・俺に、触られるの、そんなにイヤだった?」

「え?」

私は咄嗟に顔を上げた。

ううん、そんなことない。

そうじゃない。

会議室のアレは、別にイヤじゃなかった。

キスされるのも、手を握られるのも、胸を触られたって―

大麦にされるのなら、何だって・・・

否定したいのに、なのにどうしてだか言葉が出て来ない。

「泣くなよ。」

言われて気がついた。

私、また泣いてる・・・?
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