最後の恋愛Ⅱ
ふいに、終業のチャイムが鳴っているのに、気がついた。

ハッとして顔を上げる。

私は、いつの間にか席に戻り、いつの間にかちゃんと仕事をしていた模様。

何の自覚もないけれど―

そおっと隣を見たけれど、大麦の姿はもうない。

・・・帰った・・・の?

いつもなら、声をかけてきたり、メールも送ってくるし・・・

顔ものぞかないで・・・帰ってしまうなんてこと、一度もなかったのに・・・。

私は、小さくため息をこぼして、俯いた。

また、涙が出そうだ。

ようやく―

覚悟が決まったのに・・・

好きだって、自覚したのに・・・告白もできないまま、終わってしまうの・・・?

こんな・・・ことって―

「・・・だいたい・・・」

私は俯いたまま、ぽつりと呟いた。

だいたい、こんなに好きにさせたのは大麦じゃないのか?

まだお試し期間中だってのに、毎日毎日好き好き言ってきて、キスして、抱きしめて、会社でもどこでもおかまいなしにエッチなことしようとしてきて―

そりゃ、誰だって・・・

どんな女の子だって、好きにさせられるでしょ?

それが、普通でしょ?

それで、何回もだまし討ちみたいなことされたら、普通怒るでしょ?

それが、当然でしょ?

なのに、なのになのに!

一回、たった一回だけ、キライって言われたからって諦める?

諦めるか・・・普通?!
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