最後の恋愛Ⅱ
「じゃあ、お試し期間開始ってことで?」

去り際に大麦は微笑んで私の手を掴んだ。

「あ、はい・・・そ、ですね。」

ぎこちなく返す。

いくら自分より年下でも、この人はハルとは違う。

ハルよりももっと恋愛を嗜んでいて、女ってものを分かってる。

・・・

「じゃあ、また明日。」

ぽそりと言って、顔を背けた。

「おやすみ。」

「はい。」

しぶるように、手を離して、大麦の気配を背中に感じたままマンションに入る。

まだいる。

まだ見てる。

エレベーターに乗って、部屋に入るまで、きっといる。

愛されてるって、信じていいのだろうか。

怖い。

だって、大麦は危険だって声がする。

私の中の危険信号が鳴り響いてるもん。

私は

きっと



この人に溺れてしまう



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