ワンダーランドと春の雪

人外たちにも夢はある







「ミライちゃーん!! 」




後ろの席から走ってきたマリーちゃんは
そう言って私に抱きついてきた。




「やっぱり新入生の子だったのね! 同じクラスになれるなんて思わなかったよ~! しかも席も
となりなんて運命かしら! あっミライちゃんは運命って信じる派? 私は信じる派かな~だってその方が素敵だもの! 多分寮の部屋も同じよ! 」



「あーうん、私も嬉しい! 」




相変わらずマシンガンみたいによく喋る子だなと思いつつ、私もマリーちゃんとの再開を喜んだ。

すると、クラスの何人かの女の子たちが
私たちのところへ集まってきた。




「ミライちゃんだっけ。人間界の、どの国から来たの? 」

「そのヘアゴム可愛いね! 」

「やっぱり首絞めたら死ぬの? 」

「チョコレートって食べたことあるの?
どんな味? 」




彼女たちの見た目はやっぱり人間とは少し
違うものだった。

けれど、どの女の子も可愛い子ばかり。



私は彼女たちの姿に見とれながらも、聞かれたことに答えていた。





「この子、マリーの知り合いなの? 」



そのうちの一人で、背の高い女の子がマリーちゃんに尋ねた。

その子には顔を斜めに分断するように縫い傷が
あり、傷を境に若干肌の色が違う。

気が強そうで、光が無く鋭利なその瞳は
私を睨んでいるようにも見える。




「そうだよ~っ! 友達よっ! 駅で知り合ったの!
ジュリーも生きてた頃は人間だったんだよ~」



ジュリーと呼ばれた彼女は、マリーちゃんの
言葉に顔をしかめた。

そして鋭い目で私を見る。




「そうだけど……。ていうか、何で人間が
この世界にいるのよ」



生きてた頃はってことは、彼女はゾンビなの
かな。

けれどゾンビにしては容姿の整った綺麗な子だ。

そう思って見ていると、ジュリーちゃんは
舌打ちした。





「何見てんのよ。そんなにあたしが醜い?
人間はゾンビなんて見たことないもんね 」




何でそうなるんだよと思いつつ、私は首を横に振って否定した。




「そんなことないよ。スタイルも良いし、
鼻が高くて目も大きくて顔立ちも綺麗だし、
可愛いと思うけど……」



「はあ?!何言ってんのよ、頭おかしいんじゃないの?! 人間のくせにゾンビを怖がらないなんて……しかも、か、可愛いだなんて! そんなこと初めてだから反応しづらいじゃない!! 」




ジュリーちゃんはそう言って、ふいと私から
顔を背けて俯いた。


そして小さな声で。





「……あ、ありがとう」



と呟いたのだった。


うん、根は良い子っぽいな。ツンデレなだけで。


ジュリーちゃんはゾンビだけど、怖くないというのは本当だ。

最初に魔法の国で会ったサキハラくんたちの方がどちらかというとインパクトがあったからね。




「え~ミライちゃんって面白い! あっ私は
血を吸うことで有名なバンパイアなんだけど、怖くないの~っ? 私が吸うのは可愛い女の子の血だけなんだけどねっ~!ミライちゃんみたいな! 」



マリーちゃんがそう言うので私が頷くと、
彼女はまた きゃー更に惚れちゃった! と自分の腕を私に絡めてきた。



それを見ていた女の子たちの他に、今度は
男子も次々と集まってくる。




「難儀な奴だ。ジュリーを見ても悲鳴一つ
上げぬとは」

「しかも可愛いって! まあ確かに可愛いけどさ」

「美味しそう」

「てことは俺の首が取れても大丈夫なワケ? 」

「のっぺらぼうでも友達になってくれるかな
……」




口々に話すクラスメイトたちに、私は笑って
頷いた。




「こちらこそ、私なんかでよければ
どうぞよろしく」




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