届屋ぎんかの怪異譚
「……そう。そうよ。秀英が連れ帰った山吹は、あまりに暴れるから、座敷牢に入れられた。
わたしは会わせてもらえなかったけれど、ご飯も食べずにどんどん衰えていっていると、侍女たちが話しているのを聞いたわ」
そして、と、続けた白檀の声はかすかに震えていた。
「ある日、山吹は座敷牢の窓の鉄格子に帯をくくりつけて、首を吊って死んだ。
後で、その前の夜に、あの男が山吹に嘘をついたことを知ったわ。――銀花が死んだという嘘を」
あの男、とは、萱村秀英のことだろう。
白檀の顔が憎しみに歪む。
「目の前で夫を殺され牢に幽閉された山吹が、それでも生きる希望を持てたのは、銀花……あなたがいると信じていたから。
それなのにあいつは、山吹に自分の方を向かせるためだけに、山吹のたった一つの希望を奪った。
あの男のくだらない嘘で、……山吹は、自ら命を絶ったのよ」
「そして、縊鬼になった」
静かに継いだ言葉は、けれど確かな鋭さを持って響いた。