擬装カップル~私は身代わり彼女~
…そりゃあ、そうだよね。
樹くんが付き合う女の子だもん、みんなどんな子かと思うよね。
とびきり可愛いい子じゃなきゃ、納得なんて出来ないよ。
「風香、気にしちゃダメだよ!」
「うん。大丈夫」
真白にそうは言ったけど、やっぱり気になるよ…
しかも、樹くんを脅して、無理矢理彼氏にしたなんて口が避けても言えない!!
ホームルームも終り、樹くんとの待ち合わせの為に素早く帰り支度をする。
「じゃあね、風香。樹くんと帰るの?」
「うん。今日は原宿でデートなんだ♪」
「そうなんだ。良かったねー」
「真白は部活?」
「うん♪」
真白は答えながら前髪をチェックする。
真白は美術の有栖川達也先生が好き。
もう、見てるこっちの方がキュンとしちゃう位に一緒懸命で可愛い。
「達也先生によろしくね」
「うん。じゃあね、風香」
真白みたいに可愛かったらなぁ…
そしたら、樹くんと一緒にいても釣り合うのに。
ダメだ!これからデートなのに暗い顔しちゃ!
「森、ごめん!ちょっと運ぶの手伝ってくれ」
呼ばれて振り返ると、体育の先生がバレーボールを篭に入れて、何だか慌ただしく運んでいる。
「はい。何処に運べばいいんですか?」
「校庭の用具入れに運んで、鍵を閉めといてくれ。
雨が降るからグランド使えないし、式典の準備で体育館も使えないしでまいったよ」
先生から鍵とバレーボールの入った篭を受けとる。
「助かったよ。体育館の方を片付けてくるから、鍵は職員室に返しといてくれ」
「分かりました」
樹くんのクラスの前を通ると、まだホームルーム中だ。
良かった。急いで片付けて来なきゃ!
走ってグランドに行き、一番隅にある用具入れの鍵を開けて中に入る。
土埃の臭いがする用具入れの中に、バレーボールの入った篭を置いて出ようとすると
ドン!
誰かに突き飛ばされて、用具入れの中で尻餅をつく。