擬装カップル~私は身代わり彼女~

「痛っ!!」

砂埃にまみれて制服が白く汚れ、勢い良くついた掌から血が出てる。

持っていたカバンからは荷物が散らばる。

「これから樹くんに会うんでしょ?」

「それなのに、制服汚れて可哀想~」

「それじゃあ、恥ずかしくて樹くんと一緒に歩けないわね」

さっきの女の子5人が私を笑いながら、用具入れの入口に立っている。

「汚れてなくても、アンタなんかが樹くんと一緒にいる資格ないわよ」

「アンタさぁー、一体どうやって樹くんに取り入ったわけ?教えなさいよ」

私の目の前に、ツインテールの子が立って見下ろす。

「…何もしてない…」

「そんなわけないでしょ?アンタみたいなブスを樹くんが選ぶはずないんだから!」

「そうよ!私達は何度も告白したのよ!?それなのに、可愛くも賢くも目立ちもしないアンタを好きになるはずない!」

その通り。

私は見てるだけで、この子達みたいに行動を起こしてもいない。

校舎やグランドで樹くんを見て、それだけで1日幸せで、それだけで良かった。

でも、違った。
あの日図書室でキスする樹くんと美鈴先生を見て、驚いたと同時に凄い嫉妬したの…

どうして、あんなに好きって言われるのが私じゃないの?
あんなに愛しそうにキスするのが私じゃないの?

だから、無理やり彼女になった。

樹くんが好きなのは美鈴先生。
それは変わらないって分かってる。

だけど、隣にいたかった。
遠くからじゃなく、隣で樹くんを見たかったの。

「聞いてんの!?アンタ何かより、私の方が樹くんを好きなんだよ!消えろよブス!」

好きだから、ずっとずっと好きだったから…

「私だって…」

「はぁ?」

「私だって、ずっとずっと樹くんが好きなの!誰に何言われようが、私が樹くんの彼女なの!」

私の言葉に女の子達が一斉に私に掴みかかる。
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