新婚の定義──嘘つきな君と僕──
タバコを灰皿の上で揉み消すと、カウンターの上のトースターでパンを焼き、レナが作ってくれた朝食を食べ始める。

レナが作ってから時間が経ってしまった料理は冷めきっている。

「温めようかな…。」

冷めきってしまった料理をレンジで温めると、ユウは再び朝食を食べ始めた。

(冷めきった料理を一人で食べるのって、味気ないんだよな…。)

スクランブルエッグを口に運びながら、ユウはいつもレナが座っている場所に、穏やかに笑うレナを思い浮かべる。

ユウが仕事で遅く帰っても、食事を用意して、ユウが食べている間は向かいに座って他愛もない話をしたり、ただ食事をするユウを見つめて穏やかに笑っているレナ。

当たり前になっているレナとの日常を改めて思い浮かべるだけで、ユウの胸はキュッと音をたてる。

(なんだこれ…。)

途端に切なげに音をたてる胸の痛みに、ユウは戸惑った。

(コドモじゃあるまいし…。)

レナを秘かに想い、ずっとそばにいるのにその気持ちを伝えることもできず、切なさに胸を焦がし続けた高校生の頃の自分を思い出す。

(オレの片想いかよ…。)

ユウは静かに苦笑いを浮かべ、ため息をついて、レナの作ってくれた料理を口に運んだ。

(お互いに愛し合って、結婚までしたのに…何がそんなに不安なんだろう?)

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