新婚の定義──嘘つきな君と僕──
マユが編集長を務める女性向けファッション情報誌の写真撮影の休憩時間、レナはぼんやりと缶コーヒーを飲みながら考えていた。


今日の仕事は午後からだと言っていたユウを起こさずに、いつものように朝食だけは用意して仕事に出掛けたレナだったが、夕べ気まずいまま眠ってしまったことが気になっていた。

(ユウに悪気がないのはわかるんだけど…。)

付き合い出してからのユウは、本当にレナを大事にしてくれて、誰よりも愛してくれている、とレナは思う。

(そうなんだけど…なんて言うか…。)


一緒に暮らし始めて1年近く経つ。

最初の頃は、当たり前のように別々の部屋で寝起きしていた。

恋愛経験もなくて、何をどうしていいのかわからず、自分に自信がなくて、ユウにガッカリされるのが怖かった。

初めてユウに抱かれた時は、ものすごく緊張したけれど、大好きなユウに触れられることが温かくて、幸せで、本当にユウが好きだと心から思ったのを覚えている。

ユウの少し速い鼓動も、優しくレナに口付ける唇も、大事そうに触れる大きな手も、“愛してる”と言った甘く掠れた声も、あの夜のことは今でも大切にレナの胸に刻まれている。

ユウがレナを大事にしてくれることや、優しいキスも、レナを抱くユウの長い腕も、温かい胸も何一つ変わらないけど…。

(でも、最近…なんて言うか…。)

うまく答えを見つけ出せない。

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