新婚の定義──嘘つきな君と僕──
1年前、二人が付き合う手助けをしたタクミだが、時々レナに、ユウより自分を選んでとさらっと言う。

他の人が誰も呼ばない“あーちゃん”と言う呼び名でレナを呼び、いつの間にか連絡先まで交換していたり、レナもタクミのことだけは“タクミくん”と、くん付けで呼んで、他のメンバーに比べると二人はやけに親しげに話す。

ユウに対してもタクミは、ユウと自分のどちらか選ぶのはレナだとか、ユウに飽きたら自分が待ってると伝えろとか、どこまでが冗談で、どこからが本気なのか、タクミの考えていることは、よくわからない。

(まさかな…。オレが事故に遭った時も、真っ先にレナに連絡してくれたのはタクミだし…レナがニューヨークに行った後に心配して来てくれたり…オレたちが付き合う時も、結婚するときにも、いろいろ協力してくれたし…。)


ぼんやりとビールを飲んでいるユウを見て、ケイトが声をかける。

「どうしたの、ユウ?」

「あ、なんでもない。」

「なんだ?またハニーのことでも考えてんのか?」

「違うけど…リュウ、そのハニーっての、恥ずかしいからやめろ…。」

「恥ずかしいから言ってんじゃん。」

「なんだそれ…。」

ユウは照れ隠しにグラスのビールを飲み干した。
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