自惚れ男子の取説書【完】
「あぁーとりあえずこっち来い」
ため息まじりにそう言うと、さっきより幾分弱い力で外へと腕を引かれる。エントランス前に停まっていた車へと誘導された。ハザードをつけていたのは、小田さんの黒いスポーツカーだった。
「出先から来てくださったんですか?車なんて珍しいですね」
当たり前に助手席のドアを開けると、くいっと顎で乗るよう促される。こんな時でも紳士的だからすごいと思う。
回り込んで自分は運転席へと深く腰を沈めると、小田さんは目だけこちらを向ける。
「もし誰かさんがぶっ倒れてるんじゃ病院でも連れて行くかと思ってな。あー俺ってば優しいなぁ」
「すっ…すみません…」
完全に墓穴を掘った。小田さんのわざとらしく間延びした言い方に大人しく頭を下げる。