自惚れ男子の取説書【完】

夜勤への引き継ぎを終えると、流れるように記録を打ち込み始めた。

絶対、嫌だって言うと思ったけど。


記録しながら、松山さんの濃い1日を振り替える。傷口の処置に、山のような投薬。そんな中、思いの外素直に治療に向かう様子を思い出して、ふと口角があがる。


「あぁ、いたいた。松山さんどうだった?」

外来を終えた名波先生が、肩をごりごり鳴らしながら疲れた顔をしてナースステーションに入ってきた。
休み明けの今日、外来は特に混んでいたんだろう。

「お疲れさまです。今日は頑張りましたよー」

名波先生は松山さんの主治医。松山さんの素行をめげずに注意し続けた、ガッツある先生だ。
< 179 / 362 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop