自惚れ男子の取説書【完】
「笑う門には…っていうでしょう?辛くても笑ってれば、ね」
「そうですね。”病は気から”とも言いますし、ふふっ」
「でもね…そればっかりじゃパンクする事ってあるじゃない?いくら笑ってても、うまくいかない事だってあるわ」
「…そうかもしれません」
由美さんの言葉に、ふと脳裏に浮かぶあの人。少し言い淀んだ私を気遣うよう、由美さんは明るく続けた。
「そんな時、ぼんやりベンチに座ると忘れちゃうのよ。何にも考えないでぼーっと。だからあなたもたまには中庭来て一緒にぼーっときましょ」
お仕事してる人に言うセリフじゃないわね、と笑う由美さんは若い女の子みたく可愛く、まるでお母さんみたいに温かい。
「その時は、またおしゃべりしてくださいね」
へへっと照れ笑いをする私と由美さん。病棟へ着く頃には、何だかカウンセリングでも受けたみたいに心が軽くなっていた。