自惚れ男子の取説書【完】
病棟へと戻る頃には、夜勤への引き継ぎが始まっていた。戻りました、と小さく師長に声をかけナースステーションへと入る。
この時間、大きな仕事を残してたんじゃなかなか帰れない。ひとまずみんなに声をかけておこうか、と脳内で算段をつけながら片付けを進める。清掃の人が大方片付けてくれていたらしく、それもすぐに終わってしまった。
「辻さん、終わりそう?みんな引き継ぎ終わっちゃいそうだけど」
「あ、そうなの?今日はみんな早かったね、良かった良かった」
オンモードで話し掛けてきた美沙も例にたがわず引き継ぎを終えたようだ。パソコンに向かい進めている記録も、あとは抜けがないか確認しているだけ。
「松山さんの身体拭き、手伝ってくれてありがと。助かったわ」
「いえいえ、今日はお世話になりました。まだまだ傷の処置とか多いし大変だったでしょ?」
今日は私がフリー当番だったから、松山さんの担当は美沙に割り振られていた。