自惚れ男子の取説書【完】
「なっに…だいじょぶなのよぉ!ぐすっ…みっ美月とかって人…がっ……!琴っみ…報われないじゃなっい」
ひっくとしゃっくりあげながらも、どうにか訴える美沙。先生のハンカチで遠慮なく涙をぬぐい、ハンカチは既にぐしゃぐしゃだ。
「んー?なに、美月さんって…あぁ、もしかしてあの人が彼女なの?」
美沙の頭を撫でながら、名波先生は何事か思い出すように視線を宙へと向ける。どうやら”美月さん”を思い出したらしい。目が合った私は、肯定の意味で静かに頷いた。
「んー…俺は違うと思うけどなぁ、あの二人」
「んなっ…で、わかるのっ…!」
完全にぐずった子どもみたくなった美沙はバシバシ名波先生の足を叩きだした。どうにか宥めようとするけど、一方の名波先生は何か嬉しそうだし…。
「ねぇ辻さん、それあの人から聞いたの?付き合ってますって」
「え、いや…直接聞いた訳じゃないんですけど」