自惚れ男子の取説書【完】
手元に残った病棟用の車椅子を折り畳むと、んーっと大きく両腕を空へ伸ばした。
「あぁ~…良い天気」
真っ青な空に散らばる雲。普段はごった返す玄関も、風の音が耳をかすめる程に穏やかだ。
ぼーっと空を見上げながら、仕事のスケジュールを確認する。
病棟戻ったら、内服薬のチェックと16時からは入浴介助でしょ。あとは点滴作って、外泊処理完了させて…
ぼんやりとしながらも頭はフル回転。何となく算段をつけると、ほぼ定時にあがれそうで1人うなずく。といっても、人間相手じゃ予定通りにはいかない事ばかりなもので…余裕があるに越したことはない。
さっ、いい加減帰ろう。
うっかり5分位はそうしていただろうか。車椅子を手にくるり病棟へ身体を向ける。
「あっ……の!」
「はい、どうされました?」
自然に仕事モードの声になるんだから、我ながらよくやると思う。条件反射でその声に振り向くと、知った顔が立っていた。