自惚れ男子の取説書【完】
「あ、こんにちは。今日もご面会ですか」
「はい。あの、今まで父の部屋いたんですけど…はい」
松山さんの息子さんは相変わらずのどもりようで、奥手というか純朴というか。超絶美人ならまだしも、私なんぞ相手にそんなに緊張しなくても…とすら思ってしまう。
「そうだったんですか。ちょうどすれ違っちゃったんですね」
松山さんの処置やリハビリは早々に終わらせていたから、息子さんが来る頃には私は他の患者さんの事で手いっぱいで。巡視に行って以来、部屋にも行っていなかった。
話の繋ぎで何気なくそんな事を言うと、途端に顔を赤らめる彼。
「あ……の!辻さん、明日はお仕事でしょうか!いえ、明後日でも構いません。いやそうじゃなくて…いつでもいいんです!はい!」
「へ……」
茹でダコみたいな顔をして墨でも吹き出すかのようにまくし立てられた。あまりの勢いに情けない声がこぼれた。