自惚れ男子の取説書【完】

「辻さん、横田さんに連絡した?すんごい心配してたわよ。でも自分からは連絡しないんだって。今日フォローしてあげて下さいって頼まれちゃった、ふふっ」

「えっ、美沙ったら!樋口さんにそんな事頼んでたんですか?」

あまりの驚きにうっかり普段の呼び方になってしまった。連絡を忘れててっきり怒られると思ってたのに…。


「ほんと、辻さんのことよく見てるわね、彼女」

「はい…本当に。私より私のこと分かってるかもしれないです」

思わず苦笑する。
あまりに余裕のない私の事を考えてくれたんだろう。ほんと美沙は的確な気遣いをしてくれる。

「まぁ…話しづらい話ならいいけどさ。心配してくれてる人がいるって事だけ教えといてあげる」

「すみません。自分でもちょっと…消化しきれてない所が多すぎて」

受け入れる事も理解する事も出来ないまま、あの日がフラッシュバックを続ける。
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