自惚れ男子の取説書【完】
「そっか。それじゃなおのこと、こんな所で話す事じゃないわね。横田さんに聞いてもらいなさい」
ポンポンっと肩を叩く手は力強く、思わず椅子から少し落ちそうになる。でもその手が何だか頼もしくて、立ち止まっている私の肩を押してくれているような気がした。
「どれ。加藤さん帰ってこないわね、ちょっと見てくるわ」
「あっ、すみません。お願いします」
颯爽とナースステーションを去る樋口さんの背中を見送る。
爽やかなその姿とは対照的に、私の中で繰り返すフラッシュバックと渦巻くほの暗い感情。消化しきれない現状に、この2日ですっかり疲れきってしまった。
親友の優しさに頼ってみようか。
美沙へ何て言おうか考えつつ、パソコンのモニターへ意識を戻した。