自惚れ男子の取説書【完】
昼下がり、大して流行ってもいないカフェで笑い出す女二人は悪目立ちし過ぎる。
パートらしきおばさんには物珍しそうに見られるし、通りすがりの人には訝しげに見られ。それでも、美沙がいてくれて良かった…そう思える瞬間だった。
散々笑い疲れ、あぁー…と声を出し呼吸を整えると美沙は優しく微笑んだ。
「まぁさ、琴美が結局どうするかなんて分からないよ?けど、とことん付き合ってあげるわ。存分に悩みなさい」
「え…忘れろって言わないんだ?」
「潔く引くのもいいけど、やり尽くして終わった方がスッキリするのかなって。ちょっと心境の変化っていうか…うーんと。私も感化されたのかな、あのバカに」
意外な美沙の言葉は、これまた意外に名波先生の影響だったらしい。呆れるように肩をすくめる美沙も、あながちまんざらでもないんじゃないのかも。
「違うから。一理あるなってだけで、琴美が期待してるようなんじゃないからね!いいわね!」
「私何も言ってないもーん」