自惚れ男子の取説書【完】

「こんにちは」

由美さんにつられて緩んだ顔で答えるとベンチへ近づいた。

「あら、今日はお休みなのかしら?」

「そうです、夜勤明けで。用事を済ませてこれから帰るところなんです」

適当に着てきたTシャツに視線を感じ、軽くつまんでみせた。看護師はナース服を脱ぐと途端に分からなくなる…って言われるけど。由美さんはしっかり私を認識してくれてたみたいだ。

「そうなの?疲れたでしょう」

どうぞ、と勧められるまま由美さんの右側に腰掛けた。

あんなに誘惑を振り払おうと思ってたのに、由美さんのお誘いじゃ断れない。一瞬の葛藤に思わず苦笑する。

「やっぱり気持ちいいですね、ここ」

「そうでしょう?風も少しあるから、今日は特にね」
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