自惚れ男子の取説書【完】

由美さんによると、カテーテルによる心臓の治療を終え様子を見ていたらしい。

さすがに結婚式とあっては外出・外泊の許可も出ただろう。それでも退院し元気な姿で門出を祝いたい、というのが親心というものだ。


「どうにか間に合いそうなの。一安心ね」

「良かったです。娘さんの花嫁姿楽しみですね」

「それが娘ったら!私にまでドレス教えてくれないのよ。一緒に選びに行きたかったんだけどね…せめて事前に教えてくれたって良いじゃない、ね?」

娘さんへの愚痴が次々口を滑るけど、言葉とは対照的にその顔は嬉しくて仕方ないって感じだ。

「女親としては、娘の晴れ姿は気になるじゃない?ほーんと秘密主義っていうか、ケチなのようちの子」

ふんっと冗談めかして頬を膨らます姿すら可愛らしく、つくづく由美さんは”美魔女”だなと思う。これで私とかわらない位の子供がいるらしいから恐ろしい。
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