自惚れ男子の取説書【完】
「そういえば辻さんは結婚してないの?」
「えぇ、独身です。そんな予定も全然で…」
「あら!勿体ないわ。全く世の男たちはどこ見てるのかしらね!」
自嘲的に笑う私をよそに、由美さんは本気で嘆いてくれているようで。何だか申し訳ないくらいだ。
「辻さんみたいな素敵な女性、うちの息子のお嫁に来てくれたらいいんだけど。でないと、本当にあの子一生独身かもしれないわ…」
「そんな。由美さんの息子さんですもの、絶対素敵な人に決まってます」
「それが全然!親から見て優しいとは思うのよ。でもね、頑固で意地っ張り。あげく仕事が恋人なのよ。ほんと困ったものだわ」
心配そうに眉を下げ、やれやれと首を振る。言葉とは裏腹にその目は優しく穏やかだ。
こんな素敵なお母さん羨ましいな。
自分の両親は好きだし尊敬もしてる。それはそれ、これはこれ…で。思わず憧れてしまう不思議な魅力を持った人だ。