自惚れ男子の取説書【完】
「巻き込む…って。美月さんがいるんだし…今更…」
「それよ、それ!あのね『結婚おめでとう』ぐらい本人に言えないと、終わったなんて言えないのよ。いい?琴美はただ逃げてるだけ」
「んなっ……に、げっ…!無視しろとか言ったのは美沙じゃない!」
激しく首をふり「あーもうっ!」と面倒くさそうしてに美沙は悪態をつく。
「違うわよ、全然!ちゃんと終わらせた人は無視したって”逃げ”にはなんないの。ただの他人になるんだから。でも琴美は他人にもなりきれずに、未練たらたらでひたすら会わないように逃げ続けようとしてるでしょ?」
「たらたらって…そんな」
「だってそうじゃない。いつまでも前に進めないで、あの男の影をチラチラ気にし続けるの?私は嫌よ。そんな琴美…許さない。あんな男ごときに髪切って、必死で道変えたりして」
「はいはい。大丈夫だから、ね?美沙がそんな怒ってどうするの」
どうどうと諌められ荒い息を整える美沙。ぱっちりとした目をくいっと吊り上げ、今までになく怒りに満ちている。