自惚れ男子の取説書【完】
「もう……ダメなんだな」
悟ったように呟くその声からは、さっきまでの激しく乱れた感情はくみ取れない。
どこか諦めたようにはっきりと響き、思わず私は顔をあげた。
”もう”というのは正しくない。
始まりかけていた私達は、なにも始められずに終わろうとしている。
なかったことにしたかった…でも、小田さんを求める感情がそれを許してくれなくて。
だから今私たちは、始まって……そして終わる。
縫い止められていたはずの腕はいつの間にか緩み、力の抜けた腕はずるずると壁をつたい垂れ下がった。
私を覆うようにいた小田さんは距離を取り、泣きそうな程に傷ついた表情は消えていた。
その穏やかな表情はまるで、『すべて受け入れる』…そう言われているような気さえして。