自惚れ男子の取説書【完】
「小田さん。好き……でした」
まっすぐ見つめた小田さんは少し困った顔をして、必死に言葉を選んでいるようだった。
それでもやっと口にできたことで、私の心は満ち足りていた。
やっと……やっと言えた。
「過去形……なんだな」
「だって、前に進まないといけませんから」
へへっと笑みを溢す私とは対照的に、小田さんは困らせた眉を更に寄せぎゅっと唇を噛み締めた。
「……わかった」
小さく呟くと同時に穏やかな熱に包まれた。
さっきとは違う、優しさで包まれるような温かい抱擁。両腕でくるりと囲われるように、小田さんの一部にでもなったみたく同じ熱を共有する。
「俺も……過去形にする。もう決めた事なら受け入れるしかねぇだろ」
「……すみません」
そのぶっきらぼうな言葉も小田さんの精一杯の譲歩。私の勝手な言い分を聞いてくれただけで、十分だ。
好きになってよかった。