自惚れ男子の取説書【完】
【番外編・エッフェル塔】


-ピンポーン-


インターホンを鳴らしても応答はない。また残業かな、と考えつつ見慣れたキーホルダーを揺らし鍵を回した。

真っ暗なはずの室内はなぜか明るくて、部屋の奥からはテレビらしき笑い声が微かに聞こえる。

はて……消し忘れなんて小田さんらしくもない。

案の定この家の家主はすっかり寛ぎスタイルに着替え、どっしりソファの定位置に陣取っていた。

「おう、来たか」

「もう!居るならインターホン出てくれたっていいじゃないですか」

「あぁ?なんのための鍵だよ。渡してあんだろ」


基本的に土日が休みの小田さん。平日は勿論、土曜出勤もしょっちゅうだからデートのやりくりはなかなか難しい。私も私で不規則な勤務体制。ふたりで出掛けるのは難しく、結局どちらかの家で会うのがもっぱらだ。
この間鍵を渡されたのも、きっと残業で遅くなると思ったからだろう。

ごもっとも…とは思いつつ、出迎えてもらうのも好きなんだけど。面倒がられるのが容易に想像がつくので口にはしない。

預かっていたスペアキーを小田さんのキーケースと並べ定位置へと置いた。シックなレザーのキーケースとは違い、スペアキーにはビジューをあしらった可愛らしいキーホルダー。
明らかに小田さんらしくないチョイスは美月さんあたりかな。きっと家族に渡すのに使っているものだろう。
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