もう一つのダイヤモンド
お風呂から出て、ソファに座ってお茶を飲んで落ち着くと、何となく寝ようという雰囲気になるのだけれど、今日は二人の間に、いつもとはちがう、こわばった空気が流れている。

ちゃんと言わなくちゃと思ったけれど、どう話しはじめていいか分からない。

「アメリカは希望だったんですか?」

言ってしまってから、イヤな言い方かもしれないと気づく。でも、隼人さんは、静かに話してくれた。

「2年くらい前に、2週間だけ行ったことがあって。アメリカというか、世界で膝の治療では権威がある先生なんだ。それで、研修プログラムがあって、2週間のがあって、それを受けたら、やっぱり半年のも受けたいと思っていたんだ。ただ、本当にたくさんの申し込みがあるらしくて。で、今回たまたま、アジア圏の枠で、キャンセルが出たらしくて。今度の藤が丘の先生も、そのアメリカの先生の教え子で、日本では第一人者なんだ。」

「そうなんですね。」

あまりに、グローバルな話しに、相槌がやっとだった。

「申し込んではいたけど、まさか、このタイミングとは。でも、チャンスを逃したくなくて。香江の顔は浮かんだんだけど、香江なら待っててくれるんじゃないかと思って。ごめんな、欲張りで。」

「いえ、待ってていいなら、待ってるので。たぶん、私、振られたとしても、隼人さんのことずっと…好きでいそうだから。だから、アメリカ、心置きなく行ってきて下さい。応援してます。」

なんとか伝わっただろうか。
隼人さんと目を合わせると、優しく笑って、

「ありがとう。寝ようか。」

と自然に声をかけてくれた。


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