もう一つのダイヤモンド
ふと、目が覚めて、時間を見ようと枕の下を探る。隼人さんに買ってもらった枕の感触に隼人さんの家だと思い出す。

いつの間にか、隼人さんの方を向いていたらしい。けれど、隼人さんはいなかった。スマホを見ると、2時過ぎだ。


そっと、リビングへ続くドアを開ける。

キッチンの明かりだけをつけた、薄暗いリビングのソファに、隼人さんが座っていた。

「ごめん、起こした?」

「いえ、なんとなく目が覚めて……眠れないんですか?」

隼人さんの横に座ったら、膝掛けを肩からくるんでくれた。

「うーん、一度寝たんだけど、ちょっと前に目が覚めて、水飲んだら寝ようと思って。アメリカのこととか考えるとな。」

「…」

「希望してたとは言え、アメリカで自分に出来るのかなとか、香江と離れて自分が大丈夫かなとか、考え出すと不安になる…。」

そんな風に、隼人さんが自分のことを言うのは珍しい。

「でも、隼人さんも不安とか寂しいとか思ってくれたらちょっと嬉しいです。」

薄暗いリビングはいつもとはちがう、少しだけ夢の中にいるようで、素直な気持ちを口にしていた。隼人さんが、ぎゅと握ってくれた手は、少し冷えていて、ぎゅと握りかえしたら、ふっと笑ってくれた。

もう一度ベッドに入ると、布団の中は安心するような暖かさで、隼人さんに抱きしめられて、朝まで目を閉じた。


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