もう一つのダイヤモンド
………沈黙が痛い。
これは、カップルのケンカというものだろうか…
私は、経験値が低すぎて、こういうときにどうしたらいいか分からない。
そもそも、ケンカするほどの関係まで深まったことがないし、ましてや一緒に住もうという家についてもめるという経験なんてあるはずもなく。
そもそも普段からあまり自分の意見を言わずに、にこにことやり過ごしてきたから、どう言ったらいいのかも分からないし。
「コンビニ行ってきます。」
耐えられなくなった私は、逃走を試みた。
「こんな時間に?」
相変わらず、声が険しい。
「…はい。明日の朝のパン買ってきますね。」
さっき、車中で、明日の朝はご飯でいいかと話したばかりなんだけど。大人な隼人さんは、その言葉に苦笑したけど、何も言わなかった。
「じゃあ、俺が買ってくるよ。頭冷やすついでに。」
「えっ、でも私行きます。」
もううまく引くこともできない。
「じゃあ、一緒に行こうか。」
苦笑いを残しつつ、優しい顔した優しい声がかけられた。
「…はい。」
そそくさとコートを着込んで、お財布とスマホを持つ。そして、二人で玄関の外に出た。