冷たい彼-初恋が終わるとき-
「…桐生君、」
「…何だ?」
思わず桐生君の裾を引っ張る。
聞く前から恥ずかしくなって、カァーと頬が赤く染まる。
「ち、ちょっとだけ、ぎゅってしていい?」
そう切り出すと、桐生君は目をぱちくりさせた。
珍しい物を見るかのようにマジマジと見つめられて、羞恥に焦る。
「…あ、や、やっぱり今の無し!ご、ごめんなさい!変なこと言ってごめんなさい!」
ここに穴があったら隠れたい。
耳まで真っ赤にさせて俯く私に、桐生君は面白可笑しく言う。
「…可笑しな女。ったく、仕方ねえなあ」
クツクツ笑いながら私を抱き締めた桐生君。
逞しい腕に抱かれながら、桐生君の胸に顔を埋める。心地好い鼓動がとくとくと聞こえてきて、私は微笑した。