冷たい彼-初恋が終わるとき-
「…化粧なんて、してない」
もう少し女性らしくしてれば小田切君も私を見てくれたのかな?
ふんわり髪の毛も巻いて、ぱっちりアイメイクもして、ピンクのチークを頬に乗せて、唇もぷるぷるで。"可愛い"を作っていれば、振り向いて貰えたのかな。そうぼんやり考えていれば、桐生君が私を凝視していることに気付いた。
「…へえ」
「な、何?」
「…化粧してんのかと思った」
よく見りゃあしてねえわ。
ブスだし。
なんて言って顔を離す桐生君に胸がばくばく叫んでいる。息が掛かるほど近かった。桐生君の睫毛の長さが分かるほど。鳴り止まない胸の鼓動を抑えるように、ギュッと両手を握りしめた。