冷たい彼-初恋が終わるとき-
静かにタバコの煙を吐く桐生君。
「…おい、ブス。ブスはブスのままでいろ」
「ぶ、ブスブス言わないでよ」
た、確かにブスだけど。
ずけずけ言われると流石に傷付く。
「…化粧なんてすんじゃねえ」
「…しない、よ。仕方なんて分からないし。メイク道具も持ってないもん」
まるで桐生君の言葉は私に宛てた言葉じゃないみたいだった。でも、あまりにもその声色が切なすぎて私はそう言うしかなかった。
「…慣れねえ化粧して、可愛く見せようとしてる女を、俺は知ってる。似合わねえっつってんのに、俺の言葉に耳を借すことすらしねえ女だ」
遠くを見る桐生君を眉尻を下げて見ていれば、急にこちらを向いて肩を揺らす。何だか見てはいけないものを見てしまった気まずさだ。さっきまで悲しみに揺れていた目は隠れ、また冷たい目で私を見ている。
「…ブスは何やってもブスだ。だからお前は背伸びなんかすんじゃねえ」
「う、ん」
何故かその言葉はスッと胸に刻まれる。私が背伸びをしたって、似合わない。それは私らしさを見失わないための言葉だった。