冷たい彼-初恋が終わるとき-
桐生君と話してるからなのか、涙は治まっていた。
冷静さを取り戻していくうち自己嫌悪とーー醜い妬みが胸の奥から喉元にじわじわと迫る。
事実を呑み込むだけで精一杯で、そのまま窒息しそうだった。
「…ねえ桐生君」
一向に隣から居なくなる気配のない桐生君におずおずと声を掛ける。
「あ?」
「…何の、用?」
認めたくない。
だけど事実は変わり無くそこに存在するのだ。
私が触れることの出来ない遥か高みに、ふたりは居る。それを下から眺めて足掻く私は酷く滑稽だ。
溺れる私は結局、深い底で彼等を仰ぐことしか出来ない。