冷たい彼-初恋が終わるとき-




息も耐え耐えで、だらしなく開いた唇からは唾液がツゥーと滴る。最後に彼はチュッと音を鳴らして、唇をゆっくり離した。とろんとした目で彼を見つめる私の視界は滲み、この疼きがどうしようもなく、もどかしい。


何で桐生君は私なんかにキスしたの?ねえ?どうして?頭を抱えていると、碓氷君が私の頬にソッと指を滑らしてきた。




「…やぁ…っ!」

「…チッ」

「…や、だ…」




拒絶しようとしたのに、舌打ちした桐生君は背いた私の顔をぐいっと引き戻す。怖い。ぎゅっと目を瞑っていれば、桐生君の口からとんでもない言葉が飛び出した。




「乙樹を忘れたいか?」




…忘れる?


一瞬沈黙ができたが気が付けば、私はまだ熱の籠った目を下に向けていた。




「…そんなの無理、だよ。忘れたいけど、忘れられない。忘れられるのなら、とっくにそうしてる」




幾度と無くそれを願った。彼への感情が無くなってしまえば、どれだけ楽だったか。こんなに辛い思い、しなかっただろうに。


でも出来なかった。出来なかったらこそこうして泣くことしか出来ない。今になって醜い感情が剥き出しになる。


だから、私には小田切君を忘れることなんて出来ない。


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