ボーダー・ライン
「はぁ」
短いため息を漏らしながら、僕は作業を続るのであった。
時計の針が午後3時を示す、と同時にさわやかな曲とともに毎日恒例の社内放送が流れた。
『皆様、3時となりました。作業の流れを確認し、残業となる社員は管理職へ報告を。それ以外の社員は、時間内に作業が終了するよう、もう一度スケジュールを見直しましょう』
「3時、か……」
9時5時勤務の派遣社員に通常、残業はない。
だから残りあと2時間。それで僕は今日の仕事から、開放される。
早く終われ、早く、早く終われよ。
自由が欲しいんだ。
僕は願いながら、目の前にばらまかれたネジの山、それを空回りする指先でガシャガシャとこねくりまわした。
仕事よ、早く終われ。
だが焦れば焦る程、時間というのはゆっくり流れるもの。
僕の前には片付けても、片付けてもまた新しい仕事が、機械から吐き出されてくる。
そのあまりの無情さに、
「くそ……いい加減にしてくれよ、こっちは人間なんだから。心を捨てて、働けるかよ、無理だっつーの」
僕は一人ぼっちで弱音をはいた。
だがちょうどその時、見慣れた男が職場内に入ってくるのを僕は見てしまった。
キツネこと有野係長に連れられてくるスーツ姿、
「この度は誠に申し訳ありませんでした。とんだご迷惑をおかけしまして……」
彼は人材派遣会社、「株式会社SRO」営業員の長瀬だ。
――ここで働いている僕達、派遣社員達の元締めだ。
「何で、何であの奴隷商がここに……」
僕の奥歯が、きりきりと軋んだ。