夜人【ヨルヒト】さん
細く開いている扉を押し開け、ユキオミが中に入っていく。

その足元を、懐中電灯の光の輪が照らした。

「トキコちゃんも、はい」

もう一つの光が、ユキオミの手から渡される。

「はい……あっ!」

がちゃんと音を立てて、懐中電灯が床に転がった。

歩きかけていたユキオミが振り向く。

「大丈夫?」

「は……はい……」

その顔を見ないようにしながら、トキコは床にかがみ込んだ。

震える指先で、懐中電灯を掴む。

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