私は初めから病気だったワケじゃない!!
待ち合わせの駅に着くと、
A氏がいた。

「彼女はまだなの?」

「うん、来れなくなっちゃったって!」

「え!?」

「ぴろちゃん、
行こう!!」

「え〜!?」

半ば強引に、
A氏は今来た電車に、
私を乗せた!!

「彼女は、何で来れなくなっちゃったの?」

「朝、電話もらって、
親戚が来るから、
やむなく……だってさ。」

「あんなに楽しみにしていたのに……。」

これじゃ〜、
A氏とデートになっちゃうじゃん!?

彼女が、A氏のことが好きじゃなかったの?

まさか……。
最初から、ドタキャンするつもりで?

はめられた!?

「今日は、ここと、
あそこと、
行こうと思う♪
レンタサイクル使うと、
けっこう見学出来るから、
先にレンタサイクルで見て、
借りれる時間までに返却するようにして、
あとは徒歩で……。」

A氏は張りきっている。

色々調べたんだろうな……。

私は、そんな暇なかった。

二浪になると、
余裕だよね……。

私は、ため息をついた。

かばんから、
丸暗記しようと思ってノートに書き出していた英文を開いた。

はしゃいでいたA氏も、
秩父の資料をしまって、
持ってきた参考書を
取り出した。

「俺もやらなくっちゃな♪」

有名受験高校五年生は、
余裕綽々に見えた。


秩父に着いた。

駅前のレンタサイクルで、
自転車を借りた。

「じゃあ、ここに行くよ!!」

A氏は、二浪だと言うけれど、
手足がげっそり痩せた外見から想像つかないほどに、
自転車をこぐのが速い!?

東北の親戚の家に、
自転車で、野宿しながら行ったと言うのは、
本当みたいだ!!

A氏の高校は、
ガリ勉ばかりではなく、
文武両道なので、
全校生徒の持久走ではなく、
全校生徒が、
マラソン大会をする。

電車で、隣の県の駅で下車して、
学校まで走って帰るという。

学校の近くの駅から13駅先からだから、
約47キロはある!?

一人も脱落者はなく、
走るというので、
うちの高校の近所を走ってくる持久走とは、
レベルが違う!?

私も自転車通学で鍛えた足だから、
約9キロの距離を
40分でこげるけれど、
いつも男子に、
抜かれていた。

浪人生活2年目だというのに、
A氏は、尋常じゃない!?

秩父は坂道の多いので、
登りは、自転車を降りて、
押して上がった。

A氏も随分立ちこぎして、
坂の半分までは行ったが、
さすがに自転車を降りて押していた!!

博物館を見ると、
歴史好きな私たちには、
楽しい時間ではあった。

博物館の近くのお遍路さんのお寺さんに参拝して、
自転車を駅に向けて走らせた!!

「マズイ!!
返却時間に間に合わない!!」

博物館で長居しすぎた!!

下り坂を
恐ろしいほどのスピードで、
A氏がこぐ!?

私は、恐くてA氏に遅れながらも、
自分で出した最高時速で、
坂道を下った!!

山道だから、
カーブが恐い!!

よく事故に遭わずにたどり着けた……。

私は、疲労していた……。

が、
「30分オーバーですね!!」

「えっ!?
オーバーしちゃった!!」

にこにこ苦笑いをするA氏と、
私を見たレンタサイクルの人は、

「オマケするわ!!
延長料金頂きません!」

「え?
良いのですか?」

「たった30分だったからね!!
特別サービス♪」

「ありがとうございます!」

見るからに学生風の私たちだから、
オマケしてくれた♪

「じゃあ、今度は、
徒歩のエリアだね!!」

A氏が、
近場のお寺さんに案内する。

多分、A氏は、
私の自転車をこぐスピードを
計算に入れてなかったのだと思う。

自分のペースで、
返す時間設定をしていたから、
30分オーバーしてしまったのだろう。

女性は男性より、
自転車をこいだり、
歩いたりするスピードは、
速くないのは、
共学に通えば、
自然にわかるのだけれど、
A氏は、男子校に通って、
わからなかったのだろう。

それに、
全然モテそうに見えない。

おそらくは、
女の娘と出かけるのは、
初めてだろう……。
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