ご近所さん的恋事情

「あはは、すごいなー。瑠璃子さん、行動力があるんだね。でも、この街は住みやすいし、このマンションも良い物件だから、いい買い物をしたね」


いい買い物をした…誰もそんなことを言ってくれなかった。無謀な買い物だとか、悲しい買い物だとか、否定的な言葉しか言われてこなかった。

マンションを買って良かったんだ…自分でも後悔しそうになりつつあったから、渉の言葉が心に染みていく。


「そんなふうに言ってもらえて…」


「そうだ。何か知りたいこととか困ったことがあったら、いつでも言って。俺、ずっとこの街に住んでいるから、詳しいよ。連絡先教えておくね」


瑠璃子が言おうとしたお礼は消されてしまった。

渉はやっと名案が浮かんだのだ。瑠璃子とまた会うために連絡先を交換するという方法を見つけ出した。意気揚々とスマホを取り出す。


「あ、うん。まだ知らないことが多いから助かるかも。ありがとう」


渉の下心なんて微塵も感じていない。親切な人だと素直に信じてしまう。