ご近所さん的恋事情
「うん、帰ろう」


ホームに着いてから40分。やっと瑠璃子は改札の外に出れた。隣に並ぶ渉を見上げる。その時、渉も瑠璃子の方を向いて、目が合う。


「やっぱり少しだけ寄っていく?」


今夜は少し風が強く、香ばしい匂いがすぐそこに見える赤い暖簾の店から漂ってきていた。

渉は、素通りするつもりでいたけど、ついさっきまで不安な思いをしていた瑠璃子を労ってあげたいと思った。出張を理由に断ってしまったけど、このまま帰すのが心配になった。少しでも気分が紛れるのなら…


「え?いいよ。渉くん、疲れてしまうよ。帰ろう!」


焼き鳥屋の目の前を瑠璃子は先に通り過ぎる。


「待って」


「私も早く帰って、休みたいから。今日は歓迎会があって、少し疲れてるんだ」


呼び止められても立ち止まらないで、瑠璃子は進んでいく。渉は、大股歩きで隣に並んで、瑠璃子の顔を見る。何かを我慢しているかのように、強張った表情をしていた。
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