ご近所さん的恋事情
何を我慢しているか、渉は気付いていた。


「今日は本当にありがとう。今度、ちゃんとお礼させてね。じゃ、出張がんばって。おやすみなさい」


瑠璃子は渉の方を向いて話してはいるが、目を合わせない。目を合わせてしまうと求める気持ちが出てしまうから、抑えようとした結果だ。

部屋で一人でいたくない。今夜ほど一人が怖くて、寂しいと思ったことはなかった。

渉は、不自然に目を合わせない瑠璃子の腕を掴んで、自分の胸に引き寄せた。


「ごめん…瑠璃子さん、不安だよね?怖かったよね?もう少し一緒にいよう。少し先にコーヒーショップがあるから」


瑠璃子は渉の胸の中で頷く。


「でも、大丈夫だよ。気にしてくれてありがとう」


ここで渉を引き止められない。胸をそっと押して、離れる。だけど、まだ渉の目を見れなかった。


「瑠璃子さん。ちゃんと俺を見て」


渉は、瑠璃子の両頬に手を置き、自分の方をしっかり向かせた。でも、瑠璃子は目を合わせようとしなかった。
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