蜂蜜漬け紳士の食べ方
お互い無言のまま、甘い蜜のような時間が流れていく。
彼女の開いた胸元へ、伊達が何度も唇を這わせた。
お互いの呼吸からは最早熱いものしか叶わず、アキの体にはピリピリとした快感が耐えず流れる。
綾子がセットしてくれた髪は、既に伊達の手でいやらしく乱れているだろう。
窓から滲みこんでくるような街の明かりが、床に置かれたままのウィスキー瓶に乱反射する。
まるでパーティー会場のシャンデリアのように。
今までの我慢を全てぶつけられるような激しいキスが続いた。
彼の緩やかな前髪がアキの顔の皮膚を甘く愛撫していく。
既にパーティードレスは伊達によって大きく捲り上げられ、太ももにはひやりとした空気が触れた。
柔らかな内ももの皮膚を撫でる彼の手のひらが熱い。
しかし10分もしないうちに、喘ぎ声すら許さない様なこの空気へ一筋の違和感が入り込む。
出入り口へ置きっぱなしになっていたアキのハンドバッグ。
そこから漏れだしてきた、電話の着信音だった。
「伊達さ……あの、」
「ん…?」
「で、電話が……」
「……誰?」
「多分…中野くんじゃないかと…んんっ」
言葉尻は、あっけなく彼からのキスで奪われる。
生理的な涙がまた浮かぶ。もうキスは情事的なものに変わっていた。
「駄目。…他の男の名前出さないでくれ」
そして、もう一度キス。
粘膜と粘膜を合わせるような長い長いソレに、アキは従うしかなかった。
着信音が、鳴りやむ。
「アキ、好きだ」
それでも、耳へ直接流し込まれるような甘言は止まない。
「好き」
甘く指を絡まされる度。
「好きだよ」
キスをされる度。
「好きだ」
皮膚を優しく吸われる度。
「…俺の、傍にいて」
体の細胞一つ一つに、まるで蜂蜜みたいな甘い糖分が染みていく。
繰り返される伊達からの告白に、アキはそっと小さく笑った。
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