噎せかえる程に甘いその香りは

深く頭を下げた後、改めて彼女を真っすぐ見詰めた。


「それであの…私が言う事ではないかもしれませんが。蓮実さんの言葉に嘘偽りはありません。だから別れるなんて言わないで下さい。」


私が彼と半分血が繋がっている存在だと言う事。

ちゃんと説明すれば彼は彼女を繋ぎとめられた筈だ。

そうしなかったのは私との約束の所為。


『この事実は一生誰にも口外しないで。』


私は何を乱したかった訳でも壊したかった訳でもない。

だからこの秘密は永遠に“真実”にならない方がいいのだ。

その共犯に蓮実さんを巻き込んでしまったのは本当に申し訳ないと思うけれど。

彼は最愛の人の手を放してまでして誰にも認められる事もない妹を優先させるような優しい人で―――


「どうか。“兄”を宜しくお願いします。」


恋とは違うけれど私にとってとても大切な存在だから、幸せになって欲しい。

慈しむような瞳で見つめ合う二人に、強張っていた心がふっと緩むのを感じた。






***



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